たとう

今から20年ほど前、やたらと着物や帯を頂く時期があった。それも、ほどいて細工物に使うのは忍びないようなかなりの上等品ばかり。くださる方々は「細工物にでも使って」とおっしゃるんだけど、、、。

で、しばらくそのまま保管しておくことにしたのだが、たとうに入れてあるのはごくわずか。風呂敷包みだったり、一枚のたとうに何枚も着物が入れてあったり、薄紙に包んであるだけだったりで扱いが面倒。たとうに入れるにも手持ちでは足りず。

じゃあたとうを買ってこようと思ったけど、果てどこに売ってるのだろう?と考えてしまった。たまたま卸を兼ねた文房具屋さんへ行ったとき、紙製品だからひょっとしたら置いてあるかもしれないと店内を探したらたとう発見。迷わず買い込んだ。ただ、卸屋さんを兼ねてるから一枚二枚では買えず、十枚単位だった。

そんなこんなですべての着物や帯をたとうに入れて仕舞い込むことが出来たのだけど、当然たとうは使い切れないで残ってしまった。

その後、着物や帯はそのまま生かしてもらえる目途がつき、大半は着用してもらえる人達の手に渡って行った。もっとも、替りにと着物や帯が何枚か我が家に降ってきたこともあったのだけど、総量としては減っている。ぎちぎちのタンスがゆったりと引き出せるようになっている。

しかーし、たとうは減らない。

今残ってる着物や帯はもちろん、あれから頂いたものもしっかりしたたとうに入れて保管してあったから、たとうを取り換える必要がない。

さてどうしたもんだろ、処分するしかないかねえ、と思い始めた頃、知人が着付けを習い始めたという。聞けば習い始めてもう何年か経つという。「楽しくてねえ、着物が欲しくなって困るわ。」とのたもうていた。

ふっと、「たとう要らない?」と聞いてみた。間髪入れず「欲しい。たとうが足りなくてねえ。」との返事。渡りに船で我が家に眠っているたとうをもらってもらうことにした。

そして今朝、仕舞い込んであるたとうを引っ張り出してきたら、思った以上の枚数が残っていてびっくり。今後、全くいらないとの保証はないから、何枚か残して残りは全て進呈することにした。さて、喜んでもらえるかな。