雛見

よんどころない用事で出かけた先で、着物姿の細工物ウサギを見た。大小様々、着てる着物も色とりどりで見てて何だか気持ちが和む。

見ているうちにふっと思いだしたのが幼い頃の雛見。

近所のお姉ちゃん達に連れられて、雛見の歌を歌いながら集落中の雛様を見て回る。どの家も雛あられや木の実のおひねりを用意してあって、頂いたそれを食べ乍らお雛様を見てはああだこうだと姦しい。

あの頃は、年明けに木箱を担いだ焼き物のお雛様を売る行商人が各家を周り、どの家もひとつかふたつ新しいお雛様が増えているのが常だった。

お雛様と言っても、お内裏様もあるけれど、他は七福神だったり、金太郎だったり、着物姿のお姫様だったり、それこそ様々種々雑多。ほとんどの家にあったのが百人一首に出てくるような姿の白い衣を着た人形。誰に聞いても学問の神様の人形だと言われたから、多分、菅原道真を模したと思われる。

そういえば、九州旅行に行ったとき、私が実家から頂いてきた兜を持ったお姫様姿の焼き物人形と全く同じものがお城の中に展示してあったから、あの箱を背負った行商のおじさんたちは九州あたりから来てたのだろうか。

そして思いだすのは雛見の歌。

  ご~めん、ひなさまみしてくれ、おぞてもほめるに

何とも思わず、節をつけて大きな声で歌ってたけど、考えたら結構ひどいこと言いながら歩いてたんだなと思う。

標準語に意訳すると

 ごめんください、ひなさまみせてください、あまりよくなくてもほめるから

となる。

「おぞい」って、あまりよくないとか、ひどいとか、ぼろいとか、見るに堪えないとかの意味だからねえ。

今はもう焼き物のお雛様を売る行商人も来ないし、雛見をすることもなくなった。

あの頃どこの家にも飾ってあった焼き物人形はどうなったんだろうな、と思う。